「初めてナポリピッツァを食べた時に衝撃を受けました。こんなに美味いのかと。今まで自分が作ってきたピッツァとの違いに愕然としました。」その後、白木氏はドコかの真似をするのではなく、SPADA流のナポリピッツァを開発してメニューとした。「僕は日本人なので、感覚や味覚も本物のイタリア人にはなれない。けれど、日本人である自分が心から美味しいと思える食事を提供したいって思って今はやってます。」ちなみに、ピッツァだけでなくパスタにも大きな拘りがある。ペペロンチーノとジェノベーゼでは使うパスタが異なるのだ。パスタは種類が数千以上存在する。その中で相性の合うパスタをチョイスするのがSPADA流だ。
「実は現在店舗がある土地は農家を営む実家の畑だったんです。ですから、お店の周辺は田んぼや畑が多いです。田んぼの中にポツンとある感じ(笑)。以前、テナントに入って小さなお店をやっていたんですが、ちょうど車がスピードを出すエリアで集客に苦労しました。
しかも当店のお客様は女性の方が非常に多くて、全体の8割が女性です。ですから、女性の方が安心してお越し頂けるよう駐車場が広い場所を確保したかったんです。気に入って頂ければ、ココみたいに多少立地が悪くてもお越し頂けるんで、お店を創る時に過ごしやすさや空間には気を遣いました。」立地は関係無い。その言葉が表す通り、取材中も早い時間からピッツァを求める家族連れや女性グループがドンドン来店してくるのが印象的。
2012年 世界ピッツァ職人選手権 世界10位(日本人2位)を受賞した白木がオーナーを務めるSPADA。イタリアから取り寄せた石釜で焼き上げる本場ナポリピッツァを楽しめるお店だ。使用している食材は、こだわり抜いている。
特に野菜は、自家栽培にこだわり採れたての鮮度が極めて高い物のみ提供する。 地場産の朝採り野菜は、作り手の顔が見える事を大切にしてます!と白木は自信を持って語る。
メンバーの中には、プライベートの時間を使って、勉強を重ね数百本のワインをテイスティングして、ソムリエの資格を取得したり、ピッツァを焼き続けて10年になる若手もいたり成長意欲の高いメンバーが多いという。
「やっぱり厳しさというか、お客様に提供するだけの価値を考えると、焼き加減や仕上がりを見て、デシャップでやり直し!って突き返す事もありますよ!でもそれは当たり前のことですね。」メンバー同士が非常に仲の良いSPADA。しかし、その中で強制されるのではなく、自ら率先して新しい仕事を覚えたり、お客様と携わったりできる環境で、「向上心がある子には良い環境かも知れませんね^^」と笑顔の白木氏。
雰囲気づくりには非常に気を遣って施工したという、清潔感溢れる店内。来店するお客様の多くが女性だというだけあって、席は勿論、ベビーカーがストレスなく通れる構造になっており、あらゆるスペースがゆったりと取ってあるのが特徴。最近では、女子会や噂を聞きつけて来店する方も多いようで、決してアクセスが良いとは言えない環境の中で遠方からお越しになり、リピーターになる方も少なくないという。ピッツァやパスタのメニューの多さもさることながら、ワインも豊富な種類を取り揃えており、その日の気分に合わせてお任せでチョイスしてもらう事も可能だそうだ。
「2014年の春には次の店舗を出店する予定です。我々が本当に美味しいと思えるピッツァや料理をもっと多くのお客様に食べて欲しいんです。いま居るメンバーにもポジションを用意する事で、もっと成長して欲しいですし盛り上げていきたいですね。」より多くのお客様に!という想いを実現するべく、白木氏は忙しい実務の合間を縫って、新規店舗の物件探しに奔走中とのこと。
「ピザを焼く釜って、スゴくデリケートなんです。イタリアから空輸で輸送する際にも細心の注意を払って納入しますし、火を入れる際も、表面に含まれている水分を少しづつ飛ばして、本来のコンディションに整えて行くんです。それだけ拘る釜なので、お客様から視覚でも楽しんで頂ける様なお店を創りたいですね。」
実は、編集部のメンバーがSPADAを贔屓にしており、掲載に関しては強くお願いした。白木オーナーのこだわりは勿論、お店で働くスタッフが本当に楽しそうに働いている。来店すると、いつもカウンターを陣取るのだが、ピッツァを焼く前に生地のコンディション(出来)が良いと嬉しそうに話して作ってくれるピッツァは格別。最初は世界10位のピッツァってそんなに美味しいの?と半信半疑で行ってみたが、現在は「岐阜の美味しいイタリアン」リストの筆頭として、編集部の会食レパートリーに加わった事をお伝えしたい。美味しい本場ナポリピッツァを堪能して欲しい。岐阜にあって良かったと思えるお店だ。。
実はSPADAは、来店する客に本場の雰囲気を味わってもらおうという細部に心配りがいくつも存在する。一つの例がスタッフのニックネームだ。いつも笑顔で店内を明るくする女性スタッフには「天使」を意味するアンジェラと付け、皆に可愛がられる少し体型が大きなスタッフには親しみを込めて「Ciccio!」(チッチョ)というニックネームがある。提供する料理は勿論、スタッフにも白木オーナーは想いを大切にしてもらっている。「我々の生き様に共感できる方って言うのは勿論ですが、人と交わる事が好きだったり、相手の事を思いやって行動できる方と一緒に働きたいですね。約2年お店をやってきて、そういう我々の想いに共感できるメンバーが集まってきたし、いまも一緒に働いてます。」
僕は、ナポリピッツァに出会って衝撃を受けました。こんなに美味しいピッツァがあるのか!今まで自分が作ってきたのは何だったんだ?ってね(笑)。こうやってお店をやってるのは、一人でも多くの方にこの美味しさを知ってもらいたいし、食べていただければ、きっと満足してもらえるっていう自信もあります。人生は一度しかありません。後悔しないように、自分が感じるままに行動して、存分自分の人生を楽しんで欲しいですね。